財産分与の話を始めると、まず「これは分ける対象なのか」で止まります。名義が相手だから諦める、自分名義だから触られないと思う。どちらも正しくありません。
判断の軸はひとつです。婚姻期間中に、夫婦が協力して築いたものかどうか。名義は関係ありません。ここでは、その軸で何が入り何が入らないのかを一覧にします。分け方の割合は財産分与のページで試算できます。
対象になるもの
| 財産 | 確認するもの |
|---|---|
| 預貯金 | 通帳、残高証明。名義は問わない |
| 不動産 | 登記事項証明書、査定書、ローン残高 |
| 株式・投資信託 | 取引報告書、残高報告書 |
| 保険 | 解約したときに戻るお金があるもの。解約返戻金相当額の証明 |
| 自動車 | 車検証、査定額。ローンが残っていればその残高も |
| 退職金 | 支給が見込まれる場合。婚姻期間に対応する分 |
| 財形貯蓄・社内預金・持株会 | 給与明細で存在が分かることがある |
| 負債 | 住宅ローンなど、家庭生活のために負ったもの |
年金は財産分与とは別の「年金分割」という手続きで扱います。請求には期限があり、令和8年4月1日以後に離婚した場合は5年、それより前に離婚した場合は2年です。以前は一律で2年だったため、古い案内が残っていることがあります。忘れやすい項目です。
対象にならないもの(特有財産)
- 結婚前から持っていた預貯金や不動産
- 相続で得たもの
- 親などから贈与されたもの
- 婚姻中でも、夫婦の協力とは無関係に得たもの
ただし、特有財産だと主張する側が、それを示す必要があります。結婚前からの貯金でも、婚姻中の口座に混ざって出入りしていれば、区別できないと判断されることがあります。結婚時点の残高が分かる資料があるかどうかで、話が変わります。
これは民法762条2項が、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産を共有に属するものと推定すると定めているためです。家の頭金を親が出した場合の考え方は親の援助がある住宅頭金にまとめています。
判断が割れやすいもの
退職金
まだ受け取っていない退職金も、支給される見込みが高ければ対象として検討されます。全額ではなく、婚姻期間に対応する部分が対象です。定年まで年数がある場合の扱いは、事情によって変わります。
学資保険
子どものための保険ですが、夫婦の収入から支払っていれば財産分与の対象として扱われます。子ども名義でも同じです。誰が引き継ぐか、解約するかを含めて話し合う項目になります。
自動車
ローンが残っていれば、査定額から残高を引いた分で考えます。残高のほうが大きければ、プラスの財産にはなりません。名義変更にはローン完済が必要な場合があります。
自営業の事業用財産
事業用の資産と、生活のための財産の線引きが難しくなります。事業の継続に必要なものをどう扱うかは、個別の事情によります。
借金
家庭生活のために負った借金は考慮されますが、ギャンブルや個人的な浪費による借金は、原則として分担の対象になりません。何のための借入だったかが問われます。
オーバーローンの家
家の価値よりローン残高が大きい場合、その家はプラスの財産として扱いにくくなります。詳しくはオーバーローンの家は財産分与でどうなるかにまとめています。
いつの時点で見るか
対象となる財産は、一般に別居した時点を基準に確定させ、価格は分けるときの時点で見る、という整理がされることが多いとされています。
つまり、別居後に相手が引き出しても、別居時点にあった財産として扱われうるということです。別居前後の残高が分かる資料は、特に重要です。
割合について
令和8年4月1日施行の改正により、寄与の程度が異なることが明らかでないときは相等しいものとする旨が民法768条3項に明記されます。専業主婦だから少なくなる、という前提ではありません。
今日できること
- 上の表を見ながら、思い当たる財産を種類ごとに書き出す
- それぞれ、名義と、おおよその額を埋める
- 特有財産だと言えそうなものは、結婚時点の資料を探す
- 別居の予定があるなら、その前に残高の記録を残す
相手の財産が分からない場合は、相手の財産が分からないときに調べ方をまとめています。