婚姻費用は、別居中の生活そのものを支えるお金です。止まれば、待っている余裕はありません。ここでは、支払われないときに使える手続きと、相手から減額を求められたときの考え方を整理します。金額の目安は婚姻費用のページで試算できます。

まず、取り決めの形を確認する

使える手続きは、どんな形で決めたかによって変わります。

取り決めの形 できること
口約束のみ 取り決めを作るところから。分担請求調停へ
私的な書面 そのままでは差押えに進めない
公正証書(強制執行認諾文言つき) 差押えへ進める
調停調書・審判書 差押えのほか、履行勧告・履行命令が使える

まだ取り決めがない段階であれば、婚姻費用の請求手続きから確認してください。

支払われないとき

1. 支払いを求め、記録を残す

まず連絡します。一時的に払えないだけなのか、支払う意思がないのかで進め方が変わります。やり取りは日付が残る形で。

2. 履行勧告・履行命令

調停や審判で決めた場合、家庭裁判所に申し出ると、相手に支払うよう勧告してもらえます。費用はかからず、手続きも簡単です。ただし勧告そのものに強制力はありません。

3. 強制執行(差押え)

公正証書、調停調書、審判書があれば、給与や預貯金などの差押えを申し立てられます。

婚姻費用のような扶養にかかわる債権には、一度の申立てで、これから支払期限が来る分にも効力が及ぶ扱いがあります。毎月申し立て直す必要はありません。

相手の勤務先や口座が分からない場合、裁判所を通じて財産の情報を得る手続きがあります。分からないことを理由に諦める必要はありません。

4. 調停がまとまらないとき

婚姻費用の分担請求調停で合意に至らない場合は審判に移り、裁判官が事情を踏まえて判断します。調停不成立で終わりではありません。審判に移ることで、金額が決まります。

減額を求められたとき

いったん決まった額でも、後から見直しが認められることがあります。判断されるのは「取り決めの前提となった事情が変わったか」です。

事情 見られ方
相手の収入が大きく減った 理由と継続性が見られる。自発的な離職か、やむを得ない事情か
こちらの収入が増えた 分担の割合に影響しうる
子どもの人数・年齢の区分が変わった 算定の前提が変わる
相手に扶養家族が増えた 事情として考慮されることがある
取り決め時から特に変化がない 「払いたくない」だけでは事情変更にあたらない

減額を求められても、その場で応じる必要はありません。まず理由を聞き、収入が下がったというなら資料の提示を求めてください。話し合いでまとまらなければ、相手が調停を申し立てることになります。

逆に、こちらの事情が変わって増額を求めることもできます。相手の収入が上がった、子どもが15歳以上になった、想定していなかった費用が発生した、といった場合です。

離婚が成立すると切り替わる

婚姻費用は婚姻中の生活費なので、離婚が成立すると区切りがつきます。その後は養育費の取り決めに移ります。

切り替わりの時期に空白をつくらないでください。離婚の話し合いと並行して、養育費の取り決めを進めておく必要があります。すでに未払いになっている分は、離婚後も請求できる債権として残ります。ただし、離婚協議書の清算条項の書き方によっては、その権利まで放棄したと読まれることがあります。署名する前に離婚成立後の扱いを確認してください。

今日できること

  1. 取り決めの書類を探し、どの形かを確認する
  2. いつからいくら未払いかを一覧にする
  3. 支払いを求める連絡をし、記録を残す
  4. 相手の勤務先、口座など分かる情報を書き出す
  5. 減額を求められているなら、理由と資料の提示を求める

養育費が止まっている場合の手続きは養育費が支払われないときの手続きにまとめています。