別居して生活費が止まった、あるいは急に減らされた。婚姻費用は、そこから毎月の暮らしを立て直すためのお金です。ここでは、今日から動くとしたら何をどの順で進めるのかを、手順に沿って整理します。金額の目安は婚姻費用のページで確認できます。
根拠は民法760条です。夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担すると定められています。別居していても、離婚が成立するまでは夫婦です。分担の義務は続きます。「出ていったのだから払わない」という理屈は、この条文の前では通りません。
最初にすること:請求の意思を、日付が残る形で伝える
婚姻費用は、実務では相手に支払いを求めた時点が出発点として検討されることが多いとされています。別居した日ではありません。つまり、伝えるのが遅れるほど、対象になる期間が短くなる可能性があります。
まず行うのは、金額を決めることではなく、「婚姻費用を請求します」という意思を、日付がわかる形で残すことです。
なぜ請求した時点が区切りになるのか、過ぎた分をどこまで取り戻せるのかは過去分の考え方で整理しています。
| 伝え方 | 記録として |
|---|---|
| メッセージアプリ・メール | 送信日時が自動で残る。もっとも手軽 |
| 手紙 | 控えを取り、送った日を記録しておく |
| 内容証明郵便 | いつ、どんな内容を送ったかを郵便局が証明する |
| 口頭のみ | 記録が残らず、後から食い違いやすい |
内容証明でなければならない決まりはありません。連絡が取れる関係であれば、まずはメッセージで構いません。大切なのは、あとから「いつ求めたか」を示せることです。
次にすること:話し合いに必要な資料をそろえる
婚姻費用の額は、双方の収入、収入が給与か事業か、子どもの人数と年齢区分をもとに、家庭裁判所が公開している養育費・婚姻費用算定表を参考に検討されます。話し合いでも調停でも、資料がなければ数字が動きません。
- ご自身の収入がわかるもの(源泉徴収票、給与明細、確定申告書)
- 相手の収入がわかるもの。手元になければ、あることが分かっている書類を控えておく
- 子どもの年齢がわかるもの
- 住居費、保育料、学費など毎月かかっている費用のメモ
- 賃貸借契約書、住宅ローンの返済予定表など住居費の負担が分かるもの
- 別居した日、請求を伝えた日がわかる記録
相手の収入資料が手元にないことは珍しくありません。そろわないまま進めても構いません。調停では裁判所を通じて資料の提出を求める流れがあります。
話し合いでまとまらないとき:分担請求調停を申し立てる
相手が応じない、連絡が取れない、金額の話が進まない。そうしたときは、家庭裁判所の婚姻費用の分担請求調停という手続きがあります。
申し立てる場所と、必要なもの
相手方の住所地の家庭裁判所、または双方が合意して定めた家庭裁判所に申し立てます。申立書のほか、夫婦の戸籍謄本、収入がわかる資料などが必要です。書式と詳しい必要書類は裁判所の案内で確認できます。
調停での進み方
調停は、当事者が直接やり合う場ではありません。調停委員が双方から事情を聞き、資料をもとに整理していきます。相手と顔を合わせずに進む運用が一般的です。
ここでも、資料をそろえて「何が未確定か」を示せる状態にしておくことが、話を前に進める近道になります。感情的な主張よりも、収入と支出の事実が効きます。
まとまらない場合
調停で合意に至らないときは、審判に移り、裁判官が事情を踏まえて判断します。申立てから解決までには時間がかかるため、その間の生活をどう支えるかは、並行して考えておく必要があります。
算定表のどこに当てはまるかを確認する
家庭裁判所が公開している養育費・婚姻費用算定表は、収入の組み合わせと家族構成から目安を読む資料です。数字を眺める前に、自分たちがどの表のどの区分に当てはまるのかを確認してください。
- 双方の収入。相手の分が分からなければ、分かる範囲で
- 給与所得か事業所得か。表の読み方が変わります
- 子どもの人数と、14歳以下か15歳以上かの区分
- 子どもを実際に育てているのはどちらか
ただし、表だけですべてが決まるわけではありません。住居費の負担、私立の学費、継続的な医療費など、月額に含めるものと、別に協議するものを分けて整理しておくと、話し合いが具体的になります。
公的な手当とは分けて考える
児童手当や児童扶養手当は、婚姻費用とは別の制度です。手当があるから婚姻費用が要らない、という関係にはありません。手当の内容はお住まいの市区町村の窓口で確認し、夫婦の間で分担する生活費の話とは切り分けて進めてください。
進めるときに気をつけること
離婚の話と混ぜない。婚姻費用は婚姻中の生活費で、離婚するかどうかとは別の手続きです。同時に話すと論点が広がり、生活費の話だけが止まってしまうことがあります。
取り決めは書面にする。金額だけでなく、支払日、支払方法、いつからいつまでを対象にするか、事情が変わったときにどうするかまで決めておくと、後の行き違いを減らせます。
離婚の条件全体をまとめて書面にする場合の項目は、離婚協議書に書くことで確認できます。
離婚が成立すると、婚姻費用としての支払いは区切りがつきます。その後は養育費の取り決めに移ります。切り替わりの時期に空白が生じないよう、離婚の話し合いと並行して確認しておいてください。
今日できること
- 「婚姻費用を請求します」と、日付が残る形で伝える
- 手元にある収入資料と、毎月かかっている費用を書き出す
- 別居した日と、請求を伝えた日をメモに残す
- 金額の目安を確認する
1から3までは今日中にできます。取り決めた後に支払いが止まった場合や、相手から減額を求められた場合は、婚姻費用が支払われない・減額を求められたときを確認してください。