「つらい思いをしたのだから慰謝料をもらえるはず」と考えて調べ始めると、思っていたのと違う説明に出会って戸惑うことがあります。慰謝料は、離婚するすべての場合に発生するものではありません。

ここでは、どんな事情が対象になり、どんな場合に難しいと言われるのかを整理します。考え方は慰謝料のページでも確認できます。

慰謝料が問題になる場面

慰謝料は、相手の行為によって精神的な苦痛を受けたことに対する賠償です。「どちらが悪いか」ではなく、「相手の具体的な行為があったか」が見られます。

認められやすい類型

不貞行為

配偶者以外との肉体関係があった場合です。もっとも典型的な類型ですが、親密なやり取りだけでは足りないと判断されることもあります。何をもって示すかは証拠として何を集めるかにまとめています。

不貞の相手方にも請求できる場合があります。ただし、配偶者と相手方の双方から二重に受け取れるわけではありません。

暴力・暴言

身体的な暴力のほか、継続的な暴言や威圧的な言動も対象になりえます。一度きりの出来事より、継続していたことが示せるかが重要です。診断書、写真、録音、相談した記録が材料になります。

悪意の遺棄

正当な理由なく同居や協力、扶助の義務を果たさない場合です。理由なく家を出た、生活費を渡さなくなった、といった状況が該当しうる類型です。

ただし、別居そのものが直ちに悪意の遺棄になるわけではありません。相手の暴力から逃れるための別居など、理由がある場合は当然に含まれません。

難しいと言われやすい場合

事情 なぜ難しいか
性格の不一致 どちらか一方の行為とは言いにくい。離婚の理由にはなっても、賠償の対象になりにくい
価値観の違い、すれ違い 同上
親族との不和 配偶者本人の行為かどうかが問われる
相手も同じ主張をしている 双方に事情がある場合、相殺的に見られることがある
すでに関係が破綻していた後の出来事 破綻の後の不貞は、認められにくいと判断されることがある

ただし、「難しい」は「不可能」ではありません。個別の事情によって判断は変わります。また、慰謝料が難しくても、財産分与や養育費の話し合いは別に進められます。

金額に影響する事情

慰謝料には公的な基準表がありません。次のような事情を総合して判断されます。

  • 行為の内容と、どのくらい続いたか
  • 婚姻期間の長さ
  • 未成年の子どもがいるか
  • 離婚に至ったかどうか
  • 相手の資力
  • こちら側にも事情があったか

別居していた期間が長い場合、その時点で関係がどうだったかが検討されることがあります。

期間の制限

民法724条は、損害および加害者を知った時から3年、行為の時から20年と定めています。また同法724条の2により、生命または身体を害する不法行為については3年ではなく5年とされています。

いつから数えるかは事情によって変わります。「まだ大丈夫だろう」と自己判断せず、事実を把握した時期を記録に残しておいてください。起算点の整理の仕方は慰謝料の時効は3年?起算点の確認点にまとめています。

事実を知った日を入れると、残りの期間を期限カレンダーで確認できます。

取り決めるときに気をつけること

金額が決まったら、支払方法まで決めます。分割にする場合は、支払日、回数、遅れたときの扱いを書面にしてください。公正証書にしておけば、支払いが止まったときに差押えへ進めます。

また、「今後一切請求しない」という条項(清算条項)を入れるかどうかは慎重に判断してください。財産分与や養育費まで含めて放棄したと読まれる書き方になっていないか、確認が必要です。請求される側の視点は支払う側が確認したい点にまとめています。

今日できること

  1. 何があったのかを、日付とともに時系列で書き出す
  2. 上の類型のどれに近いかを見る
  3. 手元にある資料を、出来事ごとに並べる
  4. 事実を把握した時期をメモに残す

自分の事情がどう見られるのか判断がつかない場合は、相談窓口をご案内しています。