子どもが2人いる場合の養育費は、1人のときより負担が大きくなるのは自然ですが、考え方は思っているより細かく分かれます。大切なのは、先に金額だけを探すことではなく、何を当てはめると目安が見えてくるのかを知ることです。ここでは、家庭裁判所の算定表の見方と、2人いるときに取り決めで曖昧にしない点を順に整理します。
子ども2人の養育費で、先に確かめたいこと
養育費の根拠は民法766条です。離婚するときは、子の監護をすべき者、親と子の交流、子の監護に要する費用の分担などを父母の協議で定めると規定されており、このとき「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」とされています。養育費は親どうしの貸し借りではなく、子どもの生活を支えるためのお金だという位置づけです。
そのうえで押さえたいのは、養育費は「子どもが2人だから1人分の単純な2倍」とは考えないということです。家庭裁判所が公開している養育費・婚姻費用算定表では、支払う側と受け取る側の双方の収入、収入の種類、そして子どもの人数と年齢を組み合わせて、標準的な目安を見ていきます。
特に重要なのが、双方の収入をどう整理するかです。給与所得者なのか、自営業なのかで見方が違います。自営業では、売上をそのまま使うのではなく、青色申告特別控除、減価償却費、専従者給与など、申告書のどこを確認するかが問題になります。収入の整理で迷うときは、養育費の計算で収入をどう見るかで、給与所得者の場合と自営業の場合の違いを先に確認しておくと見通しが立てやすくなります。
また、子どもが2人いても、2人とも同じ年齢区分なのか、上の子だけ年齢区分が変わるのかで、見る欄が変わることがあります。算定表では、子どもの人数だけでなく年齢も要素になります。今の年齢だけを見て終わりにせず、数年後にどの時点で見直しが必要になりそうかまで考えておくと、後で話し合いがしやすくなります。
なお、まだ離婚しておらず別居中であれば、直ちに問題になるのは養育費ではなく婚姻費用の分担です。夫婦が婚姻から生ずる費用を分担する根拠は民法760条にあります。離婚前と離婚後では、同じ子どもの生活費でも扱いが変わるため、いま自分が確認すべきなのが婚姻費用なのか、離婚後の養育費なのかを切り分けておくことも大切です。
取り決めをしないまま離婚していた場合
すでに離婚していて、養育費の取り決めを何もしていない。その場合でも、請求できる道があります。民法766条の3は、費用の分担を定めないまま協議離婚したとき、離婚後に主として子どもを育てている親が、もう一方へ毎月末の支払いを請求できると定めています。令和8年4月1日施行の改正で新しく入った規定です。
ここで子どもが2人いることが効いてきます。条文は、支払われる額を「父母の扶養を受けるべき子の最低限度の生活の維持に要する標準的な費用の額その他の事情を勘案して、子の数に応じて法務省令で定めるところにより算定した額」としています。人数が考慮される仕組みになっているということです。
期間は、離婚の日から次のいずれか早い日までです。
- 父母が協議で費用の分担を定めた日
- 費用の分担についての審判が確定した日
- 子が成年に達した日
つまり、きちんと取り決めるまでの「つなぎ」として用意された制度です。これがあるから話し合いをしなくてよい、というものではありません。なお相手方は、支払能力を欠くことや、支払うと生活が著しく窮迫することを証明した場合に、全部または一部の支払いを拒めるとされています。
算定表は「何を当てはめる表」なのか
家庭裁判所の養育費・婚姻費用算定表は、標準的なケースの目安を読み取るための表です。見る順番はシンプルで、まず双方の収入を整理し、次に給与所得者か自営業かを分け、最後に子どもの人数と年齢に合う表を選びます。子どもが2人のケースでは、その2人の年齢構成に合う表を選ぶことが出発点になります。
この表で分かるのは、日々の生活や通常の教育に関する標準的な負担の目安です。一方で、すべての支出が月額の養育費に含まれるわけではありません。たとえば、私立学校への進学、塾や習い事、まとまった医療費、遠距離通学の費用などは、事情によって別に話し合うほうが整理しやすいことがあります。裁判所の説明書でも、算定表はあくまで標準的な事情を前提にしており、個別の事情は別途考える場面があるとされています。
子どもが2人いると、月々の金額だけでなく、「何を月額に含め、何を別途協議するか」を分けておく意味が大きくなります。2人とも同じタイミングで進学するとは限らず、片方だけ部活動や受験費用が増えることもあるためです。最初から細かく決め切れないとしても、追加の支出が出たときはどう相談するか、資料は何を出し合うか、合意のしかたを決めておくと混乱を防ぎやすくなります。
また、算定表は目安を知るための道具であり、相手を説得するための結論そのものではありません。収入資料が不足していたり、転職直後で収入が安定していなかったりすると、表に当てはめる前提が揺れます。数字だけを急いで出すより、資料のそろえ方と前提の置き方を丁寧に確認するほうが、結果として納得しやすい取り決めにつながります。
子ども2人のとき、取り決めで曖昧にしない点
「いつまで」と見直しの場面を先に決める
2人分の養育費では、終わり方を曖昧にしないことがとても重要です。子どもが複数いると、上の子と下の子で終了時期がずれることがあります。そのときに、1人分になった後の扱いをどうするのか、再計算するのか、自動的に見直すのかを決めておかないと、途中で対立しやすくなります。支払終期は「そのうち相談する」ではなく、できるだけ具体的に書面に残すほうが安心です。
取り決めでは、月額だけでなく、支払開始日、毎月の支払日、振込先、振込手数料をどちらが負担するかも確認します。さらに、進学や留年、浪人、就職、同居の変化など、終了時期に影響しやすい事情をどう扱うかも一緒に考えておくと、後で解釈が分かれにくくなります。項目を整理したいときは、養育費の取り決めで決めておくことが役立ちます。
収入の変化や再婚にどう備えるか
子どもが2人いると、養育費の支払い期間も長くなりやすく、その間に事情が変わる可能性があります。たとえば、収入が下がった、転職した、受け取る側または支払う側が再婚した、といった事情です。変更が問題になるときは、「取り決め時と比べて何がどう変わったか」を資料で説明できるかが大切になります。
また、再婚しただけで直ちに同じ結論になるわけではありません。子どもとの生活関係や、再婚相手と子どもが養子縁組をしたかどうかなど、確認する点があります。養子縁組をした場合の考え方はこちらで整理しています。将来の変更可能性が気になるときは、変更の条件や考え方を事前に共有しておくと、感情的なぶつかり合いを避けやすくなります。最初の合意書面に「事情変更があれば協議する」と書くだけで十分とは限らないため、どんな事情を想定するのかまで言葉にしておくと安心です。
そして、離婚時の合意は、口約束で終わらせないことが大切です。子どもが2人いると、期間が長い分だけ、後で「言った・言わない」になりやすくなります。協議離婚で話し合う場合も、離婚届を出す前に、内容と書面の形を整えておくほうが後の手続きが安定します。
決まらないとき、支払われないときの進め方
話し合いでまとまらないときは、家庭裁判所の養育費請求調停を使って整理していく方法があります。申立てから期日までの流れは養育費の調停はどう進むかにまとめています。子どもが2人のケースでは、月額だけでなく、いつまで支払うか、進学費用などをどう扱うかも含めて話し合うことがあります。まだ離婚前の別居であれば、養育費ではなく婚姻費用の分担請求調停が問題になることもあります。
また、せっかく決めても支払いが止まることはあります。そのため、取り決めをどんな形で残したかは非常に重要です。調停調書や審判書、公正証書など、民事執行法22条の債務名義になる書面があるかどうかで、その後の対応が変わります。公正証書を作るなら、強制執行認諾文言のある形かどうかを確認しておきたいところです。
あわせて知っておきたいのが、令和8年4月1日施行の改正で、子の監護の費用が一般の先取特権の対象に加わったことです(民法306条3号、308条の2)。対象には養育費や婚姻費用が含まれ、ここでも額は子の数に応じて法務省令で定めるとされています。回収の手段が以前より広がっているため、「公正証書を作っていないから何もできない」と早々に諦めないでください。実際にどの手続きを使えるかは事情によるので、窓口で確認することになります。
実際に未払いになった場合、まずは連絡の記録や振込履歴を残し、それでも難しいときは手続きを検討します。養育費のような扶養義務に関する債権には、給与差押えの範囲に特例があり、民事執行法151条の2、152条3項が関わります。手続きの全体像を落ち着いて確認したいときは、養育費が支払われないときの手続きをあわせて見ておくと整理しやすいです。
子どもが2人いる場合の養育費は、人数だけで決まるものではなく、収入、年齢、将来の見直し方、書面の残し方まで含めて考える必要があります。まずは双方の収入資料と子どもの年齢を整理し、算定表でどの欄を見るのかを確認するところから始めてみてください。




