不倫相手へ慰謝料を請求したいと思っても、何から確かめればよいのか分からず、気持ちだけが先に苦しくなることがあります。実際には、請求できるかどうかの見通し、手元に残せる証拠、相手への伝え方、まとまった後の書面の作り方を分けて考えると整理しやすくなります。ここでは、不倫相手への請求で特に争いになりやすい点を、落ち着いて確認できる順番でまとめます。

不倫相手に請求できるか、先に整理したいこと

そもそも慰謝料を請求できるのは、不貞行為が民法709条にいう不法行為にあたるためです。さらに民法719条は「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」と定めています。配偶者と不倫相手は共同不法行為者にあたるため、どちらにも請求でき、どちらか一方に全額を請求することもできます。この「連帯して」という点が、あとで説明する求償の話につながります。

不倫相手への慰謝料請求で中心になるのは、単なる親しいやり取りではなく、不貞行為があったかどうかです。一般に、配偶者以外との性的関係が問題になります。食事や連絡の頻度が多いだけでは足りるとは限らず、関係の実態が重く見られます。まずは、自分が何に傷つき、どの事実を相手に示したいのかを言葉にしておくと、その後の証拠集めや話し合いがぶれにくくなります。

不貞行為だけでなく、相手の認識も確認する

不倫相手への請求では、相手が既婚であることを知っていたか、少なくとも通常のやり取りの中で知り得た事情があったかも大切です。なお、相手自身が既婚だった場合は、請求できる人が双方の家庭にいることになります。その構図はW不倫の慰謝料で整理しています。たとえば、結婚していると伝えられていた、家庭の事情を知っていた、配偶者の存在が分かる状況だった、といった点です。反対に、相手が知らなかったと主張する場合には、その主張と手元の資料が合うかを見ていくことになります。

婚姻関係の状況も争点になりやすい

もう一つ確認したいのが、当時の婚姻関係です。すでに夫婦関係が破綻していたのか、別居の時期はいつか、離婚の話し合いがどこまで進んでいたのかといった事情は、判断に影響することがあります。請求の可否や内容を一言で決めつけることはできませんが、少なくとも時系列を整理しておくことは欠かせません。なお、請求の中身によって事情の重みは変わり、金額面でも関係の期間、発覚後の対応、別居や離婚への影響などが見られます。数字だけを追うより、どの事情が評価に関わるかを把握することが大切です。

請求前に集めたい証拠と、残し方の基本

請求を考えるなら、感情的なやり取りを増やす前に証拠を確保しておきたいところです。不貞行為では、一つの強い資料だけでなく、複数を組み合わせることで関係の実態が見えやすくなることがあります。たとえば、やり取りの記録、日付の分かる写真、宿泊や同伴をうかがわせる資料、発覚時の説明内容、自分がいつ何を知ったかのメモなどです。証拠として何を残すか迷うときは、証拠の集め方を整理したページも参考になります。

大切なのは、通常の生活の範囲で得られたものから残していくことです。無理に相手の私物を調べたり、違法なおそれのある方法で入手したりすると、別の問題が生じかねません。また、後から見返せるように、画像だけでなく、入手日、場面、誰とのやり取りかを簡単にメモしておくと役立ちます。証拠が十分でないと感じても、今ある資料を時系列で並べるだけで見えてくることがあります。

  • 不貞行為を示す資料か
  • 相手が既婚と知っていた事情があるか
  • 婚姻関係の状況を示せるか
  • いつ知ったか、いつから関係があったかを説明できるか

あわせて、請求には期間の制限もあります。時間がたつほど資料が失われやすく、連絡先が変わることもあります。気持ちの整理がつかない段階でも、発覚日や別居日などの基本的な日付は記録しておくと、その後の確認がしやすくなります。期間の考え方に不安があるときは、時効の確認点をまとめた記事を見ながら、起算点になりそうな出来事を整理しておくと安心です。

相手への伝え方は、事実と要求を分けて考える

請求を始めるときは、気持ちを一気にぶつけるより、事実と要求を分けて書くほうが話がこじれにくくなります。いつ、どのような事情を把握したのか、何について説明や支払いを求めるのかを切り分ける、ということです。相手が認めない、連絡を避ける、記録を残して進めたいといった場合には、内容証明郵便を使う場面もあります。全体の順序は、請求の進め方をまとめたページで確認できます。文面の組み立てや、まとまらなかったときの進め方は自分で請求するときの手順に整理しています。

話し合いでまとまりそうなときも、口約束だけで終えないことが大切です。書面には、何についての慰謝料なのか、支払時期、分割払いにするか、支払いが遅れた場合の遅延損害金をどうするか、といった項目を整理します。誓約書と公正証書の違いも、先に理解しておくと選びやすくなります。特に、配偶者との取り決めと不倫相手との取り決めが並行するときは、清算条項の範囲に注意が必要です。たとえば、財産分与も含めて放棄したと読める書き方になっていないか、ほかの請求は対象外である旨を明記するかなど、名目を分けて確認しておくと誤解を減らせます。

連絡の方法を選ぶときは、相手を追い詰める言葉よりも、後で読み返して事実関係が分かる文面を意識したほうが役立ちます。感情を否定する必要はありませんが、請求の場面では、怒りの強さより記録の明確さが重要になります。

不倫相手が払った分は、配偶者に請求されることがあります

ここが見落とされやすいところです。配偶者と不倫相手は連帯して責任を負うため、不倫相手が慰謝料を全額支払うと、その相手は配偶者に対して、負担部分に応じた額を請求できます。民法442条が定める求償権です。

意味するところは、離婚するかどうかで変わります。

  • 離婚して家計が分かれる場合。元配偶者が求償に応じても、受け取った慰謝料が減るわけではありません
  • 離婚せず婚姻を続ける場合。求償に応じる支払いは同じ家計から出ていきます。受け取った慰謝料が、形を変えて出ていくことになりかねません

この点は、不倫相手と書面を交わすときの内容にも関わります。求償権を放棄してもらう条項を入れるのか、入れる代わりに金額をどう考えるのか。清算条項の書き方とあわせて、名目ごとに整理しておくと後の食い違いを減らせます。求償権そのものの仕組みは、慰謝料の求償権とは何かで詳しく整理しています。

どう扱うかは事情によって変わります。ここでは「不倫相手にいくら請求するか」だけでなく、その支払いが最終的にどこから出るのかまで見ておく必要がある、という点を押さえておいてください。

認めないときや長引くときは、手続と着地点を見直す

相手が不貞行為そのものを否定する、既婚だと知らなかったと主張する、減額を求めてくるといった場面では、争点を細かく分けて考える必要があります。どの事実に認識の違いがあるのか、証拠で支えられる部分はどこか、書面に残すなら何を明記すべきかを整理すると、無用な言い合いを避けやすくなります。まとまらない場合には、裁判所の慰謝料請求調停という手続が検討されることもあります。

また、不倫相手への請求だけに意識が向くと、配偶者との離婚条件や生活の立て直しが後回しになることがあります。慰謝料は大切な論点ですが、離婚するかどうか、別居中の生活費をどう考えるか、子どものことをどう決めるかは別に整理が必要です。請求を進めるほど気持ちが揺れやすい時期だからこそ、何を求めたいのかを先に決め、書面に残す範囲を絞ることが負担の軽減につながります。

不倫相手への慰謝料請求は、証拠がそろっていればすぐ進むとは限らず、逆に資料が十分でなくても整理の仕方で見通しが立つことがあります。結論を急がず、時系列、証拠、要求内容の三つを分けて確認していくことが、納得しやすい進め方への第一歩です。判断に迷うときに利用できる相談窓口もご案内しています。