離婚後に生活が急に苦しくなると、何をどこへ相談すればよいのか分からなくなりやすいものです。生活保護を考える場面では、制度そのものの相談だけでなく、子どもの手当、住まい、仕事、養育費まで一緒に整理すると、次に取る行動が見えやすくなります。ここでは、最初の相談先と、窓口で確認しておきたいポイントを落ち着いて整理します。

まず相談するのは自治体の福祉事務所です

離婚後の生活保護について最初に相談する先は、お住まいの市区町村の福祉事務所です。自治体によっては「生活保護担当」「生活支援課」など名称が異なりますが、分からないときは市区町村役場の総合窓口で案内を受ければ大丈夫です。

生活保護の相談では、今の収入や預貯金、住まいの状況、同居家族、健康状態、働ける見通しなどを確認されます。まだ状況が整理できていなくても、家賃が払えない、食費が足りない、子どもの生活が心配といった切迫した事情は、最初にそのまま伝えてかまいません。

困りごと 主な相談先 確認したいこと
生活費全般が足りない 福祉事務所 現在の収入、住まい、資産、必要書類
子どもの手当も知りたい ひとり親支援・子育て窓口 児童手当、児童扶養手当、医療費助成
家賃や住まいが不安 住まいの支援窓口 住居確保給付金、公営住宅、家賃補助
仕事探しを進めたい 就労支援窓口 求人支援、職業訓練、利用できる制度

ひとつの窓口だけで全部が終わるとは限りませんが、最初の相談で事情を共有しておくと、次に行くべき担当につないでもらいやすくなります。

申請をためらう理由で多いのが、親族への連絡です

「親や兄弟に知られたくない」。これを理由に申請しない方は少なくありません。ここは条文の書き方を知っておくと、落ち着いて相談できます。

生活保護法4条は、2つのことを別の言葉で書いています。

  • 1項 資産や能力その他あらゆるものの活用を、保護の「要件」とする
  • 2項 民法に定める扶養義務者の扶養は、保護に「優先」して行われる

「要件」とされているのは1項のほうです。扶養は「優先」と書かれており、扶養してくれる親族がいることや、照会に応じてもらえないことが、それだけで保護を受けられない理由になるとは条文に書かれていません。

また、生活保護法2条は「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、…保護を、無差別平等に受けることができる」と定めています。相手と別れた事情や、離婚に至った経緯で扱いが変わるものではありません。

やり取りしたくない相手がいる、暴力があった、長く連絡を取っていないといった事情があるなら、その事情を窓口で具体的に伝えてください。黙っていると分かってもらえません。

「相談」と「申請」は別のものです

窓口に行ったのに、制度の説明だけ受けて帰ってきた、という話を聞くことがあります。ここも押さえておきたい点です。

生活保護法7条は、保護が「要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始する」と定めています。申請という行為があって、はじめて手続きが動きます。話を聞くだけで終わらせたくないときは、「申請したい」とはっきり伝えてください。

書類が全部そろっていなくても構いません。不足分は後から補えます。急いで対応が必要な事情があるときは、その切迫した状況もあわせて伝えてください。

相談前にメモしておきたい内容

窓口で話す前に、手元の情報を完璧にそろえる必要はありません。ただ、次の点を紙やスマートフォンに簡単にまとめておくと、説明がしやすくなります。

  • 離婚した日、別居を始めた日、住民票の現在地
  • 自分と子どもの収入源の有無
  • 家賃、光熱費、通信費、保育料など毎月の支出
  • 預貯金、保険、車、不動産など手持ちの資産
  • 養育費の取り決めがあるか、実際に受け取っているか
  • 就職活動の状況、体調面で働き方に制約があるか

持参する書類としては、本人確認書類、通帳、賃貸借契約書、給与明細、離婚後の手続き書類などが考えられます。全部そろわない場合でも、何が不足しているかを窓口で確認できます。離婚後の手続き全体の順番が不安なときは、離婚後にする手続きの流れを見ながら、戸籍、住所、保険、手当の順に整理すると混乱しにくくなります。

生活保護とあわせて確認したい支援制度

離婚後は、生活保護だけでなく、ほかの支援を組み合わせることで家計の見通しが立つことがあります。制度名まで押さえて相談すると、担当窓口でも話が進みやすくなります。全体像は離婚後に受けられる支援制度の整理も参考になります。

子どもと住まいに関する支援

子どもがいる場合は、児童手当、児童扶養手当、ひとり親家庭等医療費助成の対象になるかを確認します。住まいについては、公営住宅、住居確保給付金、自治体独自の家賃補助が使える場合があります。申請先が別でも、まずは自治体窓口で一覧にしてもらうと漏れを防ぎやすくなります。

なお、児童扶養手当では、受け取った養育費のうち100分の80に相当する額が所得に算入されます。根拠は児童扶養手当法施行令です。養育費そのものに税金がかかるかとは別の話なので、手当の見込みを考えるときは切り分けて確認しましょう。詳しい確認点は、児童扶養手当の見方を整理した記事でも確認できます。

働くための支援

就職や転職を進める段階では、マザーズハローワークの利用、自立支援教育訓練給付金、高等職業訓練促進給付金、母子父子寡婦福祉資金貸付金も候補になります。すぐにフルタイムで働けない場合でも、資格取得や求職活動を支える制度があるため、生活保護の相談と切り離さずに一緒に聞いておくと安心です。税負担では、ひとり親控除や、年末調整・確定申告での扶養控除、医療費控除、社会保険料控除も確認しておきたいところです。

また、婚姻期間中の厚生年金の記録を分ける年金分割は、離婚等から5年を過ぎると請求できません。厚生年金保険法78条の2、78条の14が根拠です。生活費の不安が強い時期ほど後回しにしがちですが、期限のある手続きとして早めに整理しておくと安心です。

養育費や別居中の生活費も並行して整理します

離婚後に子どもを育てる場合、養育費の取り決めができているかは家計に大きく関わります。養育費は、離婚の際に子の監護に要する費用の分担を定める民法766条が土台です。金額を考えるときは、家庭裁判所が公開している養育費・婚姻費用算定表を使い、双方の収入、収入の種類、子どもの人数と年齢を当てはめて標準的な目安を確認します。そのうえで、いつまで支払うか、進学費用をどうするか、月額に含めるものと別に話し合うものを整理します。受け取る側が保護を受けている場合でも、養育費の話は終わりではありません。生活保護法77条1項は、扶養の義務を履行しなければならない者があるとき、保護費を支弁した自治体がその義務の範囲内で費用を徴収できるとしています。詳しくは相手が生活保護のときの養育費をご覧ください。

まだ離婚前で別居中なら、生活費の分担は民法760条の婚姻費用の問題になります。相手から生活費が入らず、話し合いでまとまらないときは、婚姻費用の分担請求調停という手続きがあります。生活保護の相談と並行して、家庭裁判所での手続きが必要かを整理しておくと、収入の見通しを立てやすくなります。

相談先でうまく伝えるための進め方

窓口では、一度に全部を説明しようとせず、まず「今いちばん困っていること」を先に伝えるのがコツです。たとえば、住まいの維持が難しい、食費が足りない、子どもの手当の切替えが分からない、といった順番で話すと、担当者も必要な案内をしやすくなります。

  1. 今日中に困ることを先に伝える
  2. 持っている資料だけで相談し、不足書類を確認する
  3. 同じ日に手当、住まい、就労支援の窓口も確認する
  4. 次回までに何を準備するかをメモして帰る

離婚後の支援は、ひとつの制度だけで暮らしを立て直すというより、生活保護を含む複数の制度を組み合わせて考えるほうが現実的です。相談先が分からないときは、まず自治体の福祉事務所へ行き、子ども・住まい・仕事・養育費まで一緒に整理したいと伝えてみてください。次に進むための見取り図が作りやすくなります。