子どもが私立高校へ進学する予定になると、「今の養育費で足りるのか」「授業料や入学時の費用は別に話し合えるのか」と不安になりやすいものです。結論からいうと、私立高校の学費があるからといって、相手が当然に全額を負担するとは限りません。一方で、標準的な養育費とは別に協議しやすい費目もあります。ここでは、家庭裁判所の算定表の位置づけと、実際に確認したい決め方を整理します。

私立高校の学費は「養育費」にどう関わる?

養育費は、子どもの監護に要する費用の分担として決めるもので、根拠は民法766条1項です。離婚するときに父母の協議で定めると規定されており、その際は子の利益を最も優先して考慮しなければならないとされています。話し合いでは、毎月支払う養育費の額だけでなく、いつまで支払うか、進学に伴う負担をどうするかもあわせて決めることがあります。

実務では、家庭裁判所が公開している養育費・婚姻費用算定表が出発点になります。算定表は、双方の収入、子どもの人数と年齢を当てはめて、標準的な養育費の目安を読むためのものです。ただし、表はあくまで標準的な生活関係を前提にした目安です。私立高校への進学、学校ごとの納付項目、通学事情などは、個別に事情を見て調整が必要になることがあります。

そのため、今の取り決めに「私立進学時の学費」「入学時にまとまって必要になる費用」「部活動や通学に伴う費用」まで含まれているのかは、文言を丁寧に確認することが大切です。単に「養育費を支払う」とだけ書かれていると、どこまでを月額に含めるかで認識がずれやすくなります。

授業料のうち、自分たちで負担する部分を先に切り分ける

分担の話に入る前に、確認しておきたい制度があります。高等学校等就学支援金です。高等学校等の授業料に充てるために支給される仕組みで、文部科学省が所管しています。支給するのは都道府県知事で、公立の場合は都道府県教育委員会です(高等学校等就学支援金の支給に関する法律6条1項)。

額の決まり方には、押さえておきたい特徴があります。支給される額は、通っている学校の授業料の月額に相当する額です。ただし、学校の設置者・種類・課程の区分に応じて政令で定める支給限度額があり、授業料がそれを超えるときは限度額までとなります(同法5条1項)。私立高校の授業料のうち、限度額を超える部分は家庭に残ります。父母で分担を話し合う対象は、この残る部分です。

また、学校から授業料の減免を受けたときは、減免された額を控除して計算されます(同項)。取り決めに「減免があったときは計算をやり直す」と書いておきたいのは、ここに理由があります。減免を受けた分まで相手に請求すると、実際の負担と合わなくなります。

手続きの面では2点あります。ひとつは、支給が始まるのは認定の申請が学校の設置者に到達した日の属する月からだということ(同法6条2項)。やむを得ない理由で申請できなかったときは、その理由がやんだ後15日以内に申請すれば、申請できなくなった日を申請日とみなす扱いがあります(同条3項)。もうひとつは、高等学校等に在学した期間が通算して36か月を超えると支給されないこと(同法3条2項2号)です。留年して在学期間がこの枠を超えると、支援金のない期間が生じることがあります。終期の決め方を考えるうえで、見落としやすいところです。なお、高校のあとに大学や専門学校へ進むと、授業料と入学金の減免という別の制度になります(大学等における修学の支援に関する法律)。その先まで見通すならひとり親の進学と奨学金もあわせてご覧ください。

追加の負担を考える前に確認したいこと

進学の見込みと、これまでの話し合い

まず確認したいのは、その進学が以前から想定されていたかどうかです。中学受験の時点から私学進学を念頭に置いていた、夫婦で学校選びをしていた、在学中の学校から内部進学する予定だった、といった事情があれば、追加負担の話し合いに影響します。反対に、離婚時には想定していなかった事情なら、なぜ見直しが必要なのかを説明できる資料をそろえることが役立ちます。

双方の収入と、家計の見え方

次に大切なのが、双方の収入資料です。給与所得者なら源泉徴収票、自営業なら確定申告書など、できるだけ同じ年度の資料で比べます。自営業では、見かけの売上だけでなく、経費の中身や専従者給与の扱いで見え方が変わることがあります。収入の見方に迷うときは、養育費の計算で収入をどう見るかも確認しておくと整理しやすくなります。

算定表の土台も、こうした双方の収入と子どもの状況です。私立高校の学費だけを切り離して考えるのではなく、現在の養育費がどの前提で決まっているのかを押さえることが、増額や分担割合の話し合いの出発点になります。

取り決めでは、学費のどこまでを分けて書くかが重要です

私立高校の学費について話し合うときは、「学校関係費を別途協議する」だけでは不十分なことがあります。あとで行き違いが起きにくいよう、少なくとも次の点を具体的に分けておきたいところです。

  • 毎月の養育費に含める費用と、別に精算する費用
  • 入学時の費用をどう分担するか
  • 授業料以外に学校へ納める費用をどこまで対象にするか
  • 通学費、教材費、部活動費などをどう扱うか
  • 請求のたびに領収書や案内文を共有するか
  • 支払時期と支払方法をどうするか
  • 就学支援金や減免があった場合に再計算するか

また、「高校卒業まで」だけでは、留年、通信制への転校、卒業時期のずれなどで解釈が分かれることがあります。終期は曖昧にせず、普段の養育費の終わり方と、進学費用の扱いを分けて決めておくほうが確かです。終期そのものの考え方は養育費はいつまでもらえるかに、基本の決め方は養育費の取り決めで決めておくことに整理があります。

なお、学費の話と面会交流は別の問題です。会えたかどうかで学費の分担を止める、逆に学費に応じなければ会わせない、といった結びつけ方は、紛争を大きくしやすいので避けたいところです。

話し合いで決まらないときは、変更の手続きで整理します

すでに養育費の取り決めがあり、私立高校への進学をきっかけに見直しが必要になったときは、まず合意できる余地があるかを確認します。やり取りは口頭だけで済ませず、学校からの案内、納付書、収入資料、これまでの取り決め書面を手元に置いて話すと、争点がぶれにくくなります。変更の考え方は、養育費の取り決めを変えたいときも参考になります。

協議でまとまらなければ、家庭裁判所の養育費請求調停で話し合う方法があります。民法766条3項は、家庭裁判所は必要があると認めるときは協議や審判で定めた事項を変更できると規定しており、一度決めた内容を見直す道が条文上用意されています。調停では、私立高校への進学が以前から想定されていたか、現在の収入状況、月々の養育費と学校関係費をどう切り分けるか、といった点が整理されます。

調停がまとまらずに終了したときは、家事事件手続法272条4項により、調停を申し立てた時に審判の申立てがあったものとみなされます。養育費は別表第二に掲げる事項にあたるため、改めて申し立て直す必要はなく、そのまま審判で判断されます。

私立高校の学費は、子どもの将来に関わる大切な支出です。まず就学支援金で授業料のどこまでが埋まるのかを確かめ、残る部分について算定表の標準的な養育費を土台に、私立進学という個別事情をどこまで上乗せして扱うのかを、書面で残す前提で整理していくことが大切です。