慰謝料の金額で合意できたら、そこで終わりではありません。問題が起きるのは、支払いが始まってからです。一括で受け取れれば話は早いのですが、分割になると、途中で止まるリスクが残ります。

ここでは、何をどう書面に残すかを整理します。金額を決めるまでの進め方は慰謝料請求の進め方にまとめています。

書く項目

項目 書く内容
金額 総額。分割なら各回の額と回数も
名目 何に対する支払いか。財産分与や養育費と混ぜない
支払期日 一括なら期日。分割なら毎月何日か
支払方法 振込先の口座。手渡しにしない
遅れたときの扱い 下記の期限の利益の喪失を参照
清算条項 範囲を限定する。下記参照
口外しない旨 入れるかどうか。入れる場合は範囲を確認する

名目を分ける

離婚のときは、慰謝料、財産分与、養育費をまとめて話すことになります。書面では必ず分けて書いてください。「解決金として一括で」とだけ書くと、後から税の扱いや、養育費を放棄したのかどうかで争いになります。慰謝料そのものは原則として非課税ですが、それは名目が分かれていることが前提です。詳しくは慰謝料と税金の関係で確認できます。

養育費や財産分与も同じ書面に書きます。全体の項目は離婚協議書に書くことで確認できます。

誓約書と公正証書の違い

誓約書・合意書 公正証書
作り方 当事者だけで作れる 公証役場で作る。費用がかかる
効力 約束したことの証拠にはなる 同じ。加えて下記
払われないとき あらためて訴訟などの手続きが必要 強制執行認諾文言があれば、そのまま差押えへ進める

誓約書に効力がないわけではありません。合意した事実を示す証拠になります。ただし、払われなくなったときに使える手段が違います。

公正証書にするなら、「強制執行認諾文言」が入っているか必ず確認してください。「本証書記載の金銭債務を履行しないときは直ちに強制執行に服する」という趣旨の一文です。これが無ければ、費用をかけて作った意味が薄れます。

分割払いにするとき

相手に一括で払う資力がなければ、分割になります。そのときに決めておくことがあります。

  • 期限の利益の喪失。「◯回分の支払いを怠ったときは、残額を一括して支払う」という条項です。これが無いと、遅れるたびにその月の分しか請求できません
  • 遅延損害金を付けるかどうか
  • 支払いが終わる時期。長期になるほど、途中で連絡が取れなくなる可能性が上がります

総額を下げてでも一括にする、という選択もあります。回収できない金額に意味はありません。相手の資力を見て判断してください。

清算条項の範囲

書面の末尾には「本件に関し、本書に定めるほか何らの債権債務がないことを相互に確認する」という条項が入ることが多くあります。

この範囲を確認せずに署名しないでください。

  • 「本件離婚に関し」と広く書くと、財産分与も含めて放棄したと読まれるおそれがあります
  • 養育費は子どもにかかわるため別に扱われますが、争いを避けるには対象外である旨を明記しておくほうが安全です
  • 相手から「今後一切請求しない」という書面を求められた場合、何を放棄することになるのかを1つずつ確認してください

払われなくなったとき

  1. まず連絡し、記録を残す。一時的な事情か、払う意思がないのかで対応が変わります
  2. 公正証書があれば差押えへ。給与や預貯金を差し押さえられます
  3. 誓約書だけなら、手続きが必要。支払いを求める訴訟などを検討することになります

差押えには相手の勤務先や口座の情報が必要です。書面を作る段階で、勤務先を書いてもらっておくと後が楽になります。

そもそも話し合いがまとまらず書面が作れない場合は、家庭裁判所の慰謝料請求調停という手続きがあります。調停で合意すれば調停調書になり、公正証書と同じように差押えへ進めます。

今日できること

  1. 合意した内容を、上の項目に沿って書き出す
  2. 一括か分割か、分割なら回数と各回の額を決める
  3. 公正証書にするかを決める
  4. 清算条項の範囲を確認する。相手の書面を受け取っている場合は特に
  5. 相手の勤務先を書面に入れられるか確認する