財産分与の話し合いがまとまったら、内容を書面にします。ここを口約束で済ませると、後から「そんな約束はしていない」となったときに何も示せません。

ここでは、書面に何を書くかを整理します。何が分ける対象になるかは分けられる財産・分けられない財産で確認できます。

書く項目

項目 書く内容
対象の財産 種類、名義、金額。「預貯金」ではなく金融機関名と支店名まで
基準時 いつ時点の財産を対象にするか
分け方 誰が何を取得するか。割合ではなく、具体的に
支払方法 振込先、期日。分割なら回数と各回の額
不動産の扱い 名義をどうするか、登記をいつまでに済ませるか、費用は誰が持つか
負債 誰が返済するか。住宅ローンがあれば金融機関との関係も
年金分割 合意分割をするかどうか、按分割合(3号分割との違い)
清算条項 下記参照

財産は具体的に書く

「夫は妻に財産分与として金銭を支払う」だけでは、後から争いになります。どの口座から、いくらを、いつまでにまで書いてください。

基準時を書く

対象となる財産は、一般に別居した時点を基準に確定させ、価格は分けるときの時点で見る、という整理がされることが多いとされています。合意書にも、いつ時点の残高をもとにしたのかを書いておくと、後から金額の根拠を説明できます。

養育費や慰謝料も同じ書面に書きます。全体の項目は離婚協議書に書くことで確認できます。

清算条項の落とし穴

合意書の末尾には、多くの場合「本件に関し、本合意書に定めるほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する」という趣旨の条項が入ります。これが清算条項です。

この一文の書き方で、後から請求できるかどうかが変わります。

  • 「本件離婚に関し」と広く書くと、慰謝料も養育費も含めて放棄したと読まれるおそれがあります
  • 養育費は子どもの権利にかかわるため別に扱われますが、争いを避けるには養育費は本条項の対象外である旨を明記しておくほうが安全です
  • 後から財産が見つかった場合にどうするかを、あらかじめ書いておく方法もあります

相手から示された書面にこの条項が入っていたら、署名する前に範囲を確認してください。

公正証書にするかどうか

私的な合意書 公正証書
作成 当事者だけで作れる 公証役場へ。費用がかかる
支払いが止まったとき あらためて手続きが必要 強制執行認諾文言があれば差押えへ進める

一括で支払いが済むなら、私的な合意書でも足りることが多いです。分割払いにする場合や、支払いが先になる場合は、公正証書にしておく価値があります。その際は「強制執行認諾文言」が入っているか必ず確認してください。これが無いと、公正証書にした意味が薄れます。

期限に注意する

財産分与を求められる期間は、民法768条2項により離婚成立から一定期間に限られます。改正により、令和8年4月1日以後に成立した離婚については5年、それより前に成立した離婚については2年とされています。

ご自身の場合がいつまでかは、期限カレンダーで確認できます。

離婚を先に成立させると、この期間が動き始めます。財産分与の話がまとまっていない状態で離婚届を出す場合は、期限を意識して進めてください。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の財産分与請求調停という手続きがあります。

不動産があるとき

名義を移す場合、合意書とは別に登記の手続きが必要です。合意書に「いつまでに登記する」「費用は誰が負担する」まで書いておいてください。離婚後に連絡が取れなくなり、名義が変えられないまま残るケースがあります。

今日できること

  1. 対象になる財産を、名義と金額つきで一覧にする
  2. 基準時(別居日など)を確定させる
  3. 誰が何を取得するかを具体的に書き出す
  4. 清算条項の範囲をどうするか決める
  5. 公正証書にするかを決める

相手の財産が分からず一覧が作れない場合は、相手の財産が分からないときに調べ方をまとめています。