結婚していない相手との間に子どもがいる場合、養育費の話は「認知」から始まります。ここが済んでいないと、そもそも請求の土台がありません。反対に、認知が済めば、結婚していた場合とほぼ同じ枠組みで考えられます。順に整理します。
認知があって、はじめて父子の関係になります
民法779条は、「嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる」と定めています。母親については出産の事実で親子関係が認められますが、父親との関係は認知によって生じます。
つまり、いくら「子どもの父親だ」と分かっていても、認知がなければ法律上の父子ではありません。養育費を請求する相手としての立場も生じません。
認知の方法は、民法781条により、戸籍法の定めるところによる届出です。父親が自分から届け出ることを任意認知といいます。相手が応じるのであれば、手続き自体は複雑ではありません。
相手が応じないときは、訴えができます
問題は、相手が認知に応じない場合です。
民法787条は、「子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる」と定めています。子どもが幼ければ、親権者である母親が法定代理人として進めることになります。
ここで期限があります。同条ただし書は、「父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない」としています。相手が生きている間は期限がありませんが、亡くなってから3年を過ぎると訴えができなくなります。
「いつか話し合えれば」と置いておくと、この期限に触れることがあります。相手の健康状態や連絡の取りやすさが変わりそうなら、早めに動くことを考えてください。
認知が済めば、養育費の枠組みは同じです
ここが大事なところです。民法788条は、766条から766条の3までの規定を、父が認知する場合について準用すると定めています。
766条は、子の監護に要する費用の分担を父母の協議で定めるという規定です。つまり、認知があれば、離婚した夫婦と同じように養育費を取り決められます。
さらに766条の3も準用されます。これは令和8年4月1日施行の改正で入った規定で、費用の分担を定めないまま別れた場合に、主として子を育てている側が、もう一方へ毎月末の支払いを請求できる特例です。額は子の数に応じて法務省令で定められます。
結婚していなかったから不利、ということではありません。認知という一段階があるだけで、その先の枠組みは共通です。
認知で変わるのは、養育費だけではありません
認知は養育費の入口ですが、効果はそこだけにとどまりません。子どもと父親の間に法律上の親子関係が生じるため、次のことにも関わります。
| 項目 | 認知があると |
|---|---|
| 養育費 | 民法766条の準用により取り決められる |
| 相続 | 子どもは父の相続人になる |
| 扶養 | 直系血族として、互いに扶養の義務を負う(民法877条1項) |
相続の点は、見落とされがちです。認知がなければ、父が亡くなったときに子どもは相続人になりません。養育費を受け取らない選択をする場合でも、子ども自身の権利として何が変わるのかは、分けて考える価値があります。
金額の考え方も、結婚していた場合と同じです
養育費の目安は、家庭裁判所が公開している養育費・婚姻費用算定表で考えます。当てはめるのは、双方の収入、その収入が給与か自営業か、子どもの人数と年齢の区分です。婚姻関係があったかどうかは、この表に入る要素ではありません。
相手の収入をどう見るかで迷うときは、養育費の計算で収入をどう見るかを先に確認しておくと、資料の集め方が定まります。
取り決めるときに決めておきたい項目も同じです。月額、支払日、いつまで支払うか、進学費用などを別に協議するかどうか。詳しくは養育費の取り決めで決めておくことにまとめています。
話し合いでまとまらないとき
認知が済んでいれば、家庭裁判所の養育費請求調停を使えます。調停がまとまらなくても、養育費は家事事件手続法の別表第二に掲げられた事項にあたるため、同法272条4項により、調停を申し立てた時に審判の申立てがあったものとみなされます。そのまま審判で判断が続く仕組みです。
流れを知っておきたいときは調停の進み方と準備を確認してください。
なお、認知がまだで、相手も応じない状態であれば、先に認知の手続きが必要です。順番を飛ばすと、養育費の話に進めません。
取り決めの形で、あとの手が変わります
認知が済み、金額が決まったら、次はどの形で残すかです。ここは結婚していた場合と同じです。
支払いが止まったときに強制執行へ進めるのは、調停調書、審判書、強制執行認諾文言付きの公正証書など、民事執行法22条の債務名義にあたる書面がある場合です。口約束やメッセージのやり取りだけでは、そこまで進めません。
養育費のような扶養義務にかかる債権には、給与差押えの範囲について特例があり、民事執行法151条の2、152条3項が関わります。この特例は、婚姻関係があったかどうかで変わるものではありません。認知が済んでいれば、同じ枠組みで守られます。
手当や支援の扱いも確認します
ひとり親として子どもを育てる場合、児童扶養手当の対象になるかを確認します。婚姻関係の有無ではなく、子どもの養育状況などで判断される制度です。申請先は市区町村の窓口です。
ここで注意したいのが、受け取った養育費の扱いです。児童扶養手当法施行令により、受け取った養育費の100分の80に相当する額が所得として算入されます。養育費そのものに税金はかかりませんが、手当の額には影響します。
詳しい見方は養育費と税金の整理で確認できます。
進める順番
- 認知が済んでいるかを戸籍で確認する
- 済んでいなければ、相手に認知を求める。応じなければ訴えを検討する
- 認知後、養育費の取り決めを進める。算定表の前提をそろえる
- 取り決めは書面に残す。公正証書にするなら強制執行認諾文言を確認する
- 児童扶養手当など、公的な支援の申請を並行して進める
結婚していない場合の養育費は、認知という入口があるだけで、その先は同じ道です。まずは戸籍を確認し、どの段階にいるのかをはっきりさせるところから始めてみてください。




