児童扶養手当について「事実婚だと支給停止になるのか」と不安になる方は少なくありません。実際には、同じ「止まる」という言葉でも、受給資格そのものの見直しと、届出不足による一時差し止めは別の話です。まずは何が問題になっているのかを分けて考えると、今やるべきことが見えやすくなります。

事実婚で問題になるのは、資格の見直しか一時差し止めか

検索では「支給停止」とまとめて呼ばれがちですが、実務では大きく2つの場面があります。

場面 何が確認されるか 対応の方向
生活実態の変化 事実婚にあたるような同居や生計の一体性があるか 現在の住まい方、生活費の負担、家計の状況を整理する
届出や資料の不足 現況届や追加資料が出ているか 不足書類を確認して期限内に提出する

後者については、児童扶養手当法28条1項が、受給している人に届出や書類提出を求めています。毎年の現況届はその代表例です。正当な理由なく届出をしない、または書類を出さないときは、同法15条により手当の支払を一時差し止めできるとされています。

では、事実婚のほうは何を根拠にしているのでしょうか。条文には「事実婚だと支給を停止する」という定めはありません。3つの条文のつながりで、結果としてそうなります。

まず入口です。児童扶養手当法4条1項1号イは、父母が婚姻を解消した児童を母が監護する場合に、その母へ手当を支給するとしています。次に同条2項4号が、その児童が母の配偶者に養育されているときは支給しないと定めています。そして同法3条3項が、この法律にいう「婚姻」には婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含み、「配偶者」には同様の事情にある者を含むとしています。

つまり、届出をしていなくても事実上婚姻関係と同様の事情にあれば、その相手はこの法律の「配偶者」にあたります。事実婚という独立した停止事由があるのではなく、法律上の配偶者と同じに扱われた結果として、支給されない場合にあたるということです。確認されるのが書類の形式ではなく生活の実態になるのは、条文がこう組まれているためです。

一方で、事実婚が問題になるのは、単に誰かと知り合っているからではなく、生活の実態として夫婦に近い関係とみられるかどうかです。この点は自治体が個別事情を見て確認するため、住所が別なら必ず大丈夫、反対に食事をしただけで直ちに該当する、というように一律ではありません。

事実婚と見られやすい事情を、先に整理しておきます

確認されやすいのは、形式よりも実態です。たとえば次のような点は、説明を求められることがあります。

  • 同じ住所で暮らしている、または実際には同居に近い状態が続いている
  • 家賃、光熱費、食費などを継続して分担している
  • 相手が日常的に家に泊まり、生活の本拠がその住まいにあるように見える
  • 対外的に夫婦として扱われる事情がある

反対に、子どもの送迎を手伝ってもらっている、病気のときに一時的に助けてもらった、という事情だけで結論が決まるわけではありません。大切なのは、どのくらい継続しているのか、生活費の負担がどうなっているのか、住まいの実態はどうか、を落ち着いて説明できることです。

また、元配偶者から受け取る養育費と、事実婚の問題は別に考える必要があります。養育費は児童扶養手当法施行令により、受け取った額の100分の80に相当する額が、支払を受けたものとみなされて所得計算に入り、手当額に影響します。ただし、養育費を受け取っていること自体が、直ちに事実婚を意味するわけではありません。養育費の確認方法や手当額の考え方は、児童扶養手当の見方を整理した記事も参考になります。

現況届や追加資料で確認されること

児童扶養手当では、受給資格と手当額を確認するために、継続して届出や資料提出が求められます。現況届を軽く考えないことが大切です。流れを確認したいときは、現況届で見ておきたい点も役立ちます。

児童扶養手当法29条1項は、受給資格や額を決めるために必要な書類の提出を命じることができると定めており、その中には、子どもの父または母が支払った養育費に関する資料も含まれます。つまり、自治体は「生活実態」と「所得や養育費」の両方を見て判断材料を集めます。

そのため、次の資料は手元で整理しておくと安心です。

  • 住民票や賃貸借契約書など、住まいの状況がわかるもの
  • 家賃、光熱費、通信費などの負担関係がわかるもの
  • 養育費の取り決め書、公正証書、振込記録など
  • 別居や転居の時期がわかるメモや書類

提出を求められたときは、出せる資料と出せない資料を分け、出せない理由があるならその事情を窓口で説明しましょう。連絡を後回しにすると、届出不足として扱われやすくなります。

止まりそうなとき、止まったあとに確認したい進め方

まずは、自治体からの通知が「資格の見直し」なのか、「書類未提出による一時差し止め」なのかを確認します。後者であれば、不足資料の提出で解消できることがあります。前者であれば、生活実態の説明や、いつから状況が変わったのかの整理が重要です。

もし事実婚にあたる状態が解消し、あらためて要件を満たすことになった場合でも、自動で元に戻るとは限りません。児童扶養手当法7条では、手当は認定請求をした日の属する月の翌月から始まるとされており、申請が遅れた分はさかのぼらないのが原則です。支払期月の考え方も含めて、支給日と申請時期の基本を確認しておくと動きやすくなります。

また、児童扶養手当だけで家計を考えないことも大切です。状況によっては、児童手当、ひとり親家庭等医療費助成、公営住宅、住居確保給付金、自立支援教育訓練給付金、高等職業訓練促進給付金、母子父子寡婦福祉資金貸付金など、別に確認できる制度があります。全体像は離婚後に受けられる支援制度の整理で確認できます。

不安が大きいときほど、思い込みで動くより、通知書の内容、現在の住まい方、家計の負担、養育費の受け取り状況を順に整理することが近道です。事実婚かどうかの評価は、名前ではなく実態で見られます。まずは届出漏れがないかを確かめ、説明に使える資料を手元にそろえておきましょう。