ひとり親家庭で子どもの進学を考えると、まず奨学金を探したくなるかもしれません。ただ、実際には「奨学金だけで足りるか」を考えるより先に、授業料の支援、毎月の家計、養育費の分担、申込時に求められる書類を分けて整理するほうが進めやすくなります。進学の直前に慌てないために、見落としやすい確認点を順番に整理します。
まずは「奨学金」以外の支援も分けて見る
進学に関わる支援は、ひとまとめにせず、何を軽くする制度なのかで分けて考えるのが基本です。学校ごとに案内される給付型・貸与型の奨学金だけでなく、授業料そのものを支える制度、ひとり親家庭向けの貸付、自治体の支援が並行して使えることがあります。
| 支援の種類 | 主に確認すること | 窓口の例 |
|---|---|---|
| 学校の授業料支援 | 対象となる学校種別、申請時期、在学要件 | 学校 |
| 給付型・貸与型奨学金 | 家計基準、成績基準、予約採用か入学後か | 学校、募集要項 |
| ひとり親家庭向けの貸付 | 何の費用に使えるか、返済の条件 | 自治体の窓口 |
| 家計全体を支える制度 | 手当、医療費助成、住まいの支援の有無 | 自治体の窓口 |
たとえば高等学校等就学支援金は、高校などの授業料に充てる制度です。支給は認定の申請が学校に届いた月から始まり、在学期間が通算36か月を超えると対象外になり得ます(高等学校等就学支援金の支給に関する法律3条2項2号、6条2項)。「あとでまとめて出るはず」と考えず、学校から配られる案内の時期を逃さないことが大切です。
高校のあとに進むなら、仕組みが変わります。大学、高等専門学校、専門課程を置く専修学校については、授業料と入学金の減免という別の制度があります(大学等における修学の支援に関する法律1条、2条1項)。奨学金とは別の制度で、両方を使う形になります。
ここで先に確かめたいことが2つあります。ひとつは進学先が対象校かどうかです。減免があるのは、国や自治体の確認を受けた大学等に在学する場合に限られます(同法2条4項、3条1項)。志望校を決める段階で見ておきたい点です。
もうひとつが要件です。同法4条1項は、対象を「特に優れた者であり、かつ」次のいずれかに該当する者としています。3人以上の子等の生計を維持する者に生計を維持されている子等であること、または、学生とその生計を維持する者の収入の状況から授業料等の負担を求めることが極めて困難な状況にあることです。家計の事情だけでは足りず、学業の面も見られます。ひとり親家庭だから当然に対象、という制度ではありません。
申請先も押さえておきたいところです。認定は、学業成績に関する書類などを添えて、在学する大学等の設置者へ学生本人が申請します(同法5条1項)。役所ではなく学校へ出す手続きです。なお、給付型の奨学金はこの法律ではなく、独立行政法人日本学生支援機構法13条1項1号による学資の支給として、授業料等減免と相まって行われます。名前が似ていても別の制度なので、募集要項もそれぞれ確認してください。
申込前にそろえたい書類と、家計の見方
奨学金や授業料支援の審査では、世帯の収入状況や課税情報をもとに確認されることが多くあります。離婚や別居の前後は、住民票、課税証明、健康保険、養育費の取り決めの時期がずれて、家計の実態と書類の見え方が一致しないことがあります。まずは、誰の収入が審査対象になるのか、いつ時点の情報で見られるのかを募集要項で確認してください。
ひとり親家庭では、児童扶養手当を受けながら進学準備をすることもあります。この手当は、認定請求をした日の属する月の翌月から支給が始まり、申請が遅れた分はさかのぼりません(児童扶養手当法7条)。就学支援金が申請の届いた月から始まるのに対し、こちらは翌月からです。似ているようで起点が違うので、支給日と申請が遅れたときの扱いもあわせて確認しておくと安心です。また、受け取った養育費は、その全額ではなく100分の80に相当する額が所得計算上算入されます(児童扶養手当法施行令)。進学に向けて家計を見積もるときは、手取り感覚だけでなく、制度上どう扱われるかも分けて見ておく必要があります。
家計の整理は、離婚後の家計を組み直す流れに沿って、固定費と教育費を分けて確認すると考えやすくなります。受験期だけの出費、入学時にまとまりやすい費用、進学後に毎月続く費用を別々に書き出しておくと、どこを奨学金で補い、どこを家計や他の支援でまかなうかが見えやすくなります。
相手方と決めておきたい教育費の分担
離婚後の進学準備で見落とされやすいのが、もう一方の親との教育費の分担です。子の監護に要する費用は、離婚の際に協議で定めることが予定されています(民法766条)。毎月の養育費だけを決めて安心してしまうと、受験料、入学に伴う費用、通学費、学校外で必要になる費用について後から認識がずれることがあります。
養育費を考えるときは、家庭裁判所が公開している養育費・婚姻費用算定表が参考になります。算定表では、双方の収入、収入の種類、子どもの人数と年齢を当てはめると、標準的な水準を読み取れます。ただし、表に出てくるのはあくまで標準的な目安です。進学で個別に大きくなりやすい負担まで当然に含まれるとは限らないため、高校や大学、専門学校への進学を見据えるなら、いつまで支払うのか、月額に含めるものは何か、別途協議する費用は何かを言葉で残しておくことが重要です。
特に私立学校への進学や通学範囲の広がりは、考え方が分かれやすいところです。具体的な整理のしかたは、高校以降の学費をどう決めるかも参考になります。話し合いでまとまらないときは、家庭裁判所の養育費請求調停があります。算定表を踏まえながら、支払額だけでなく、いつまで支払うのか、進学に伴う費用を別に協議するのかまで話し合えます。
奨学金と一緒に、家計を支える制度も並行して確認する
進学費用の不安が大きいときほど、奨学金だけに絞らず、家計全体を下支えする制度を並行して確認することが大切です。ひとり親家庭では、児童手当、児童扶養手当、ひとり親家庭等医療費助成のほか、公営住宅、住居確保給付金、自治体独自の家賃補助が家計の固定費を軽くすることがあります。親自身の働き方を立て直す支援としては、自立支援教育訓練給付金、高等職業訓練促進給付金、マザーズハローワークも確認したい制度です。進学準備のために借入れを考える場面では、母子父子寡婦福祉資金貸付金が選択肢に入ることもあります。
また、税の面では、ひとり親控除、扶養控除、医療費控除、社会保険料控除の確認で、家計の見通しが変わることがあります。制度の全体像は、離婚後に受けられる支援制度の整理から見渡しておくと、申請の順番をつけやすくなります。進学の準備では、子どもの進路を決めることと、家計を守ることを同時に進める必要があります。まずは学校から出る募集要項、自治体でもらう支援案内、離婚時の取り決め書の3つを手元に置き、足りない情報を一つずつ埋めていく進め方がおすすめです。




